A: クライメートファイナンスは、炭素排出量を削減または排出を回避することで気候変動の「緩和」と、気候変動のリスクと影響を管理する「強靭化と適応」を促す資金フローを指します。新興国市場では気候変動の緩和と適応の両面で資金が大幅に不足しており、その規模は2030年までに年間約1兆7,000億から3兆4,000億ドルに達すると試算されています。ここで重要な役割を期待されているのが民間金融で、必要な投資額の約80%を民間セクターが担う必要があると想定されます。
Q: この分野でのIFCの役割について教えてください。
A: IFCは、新興国市場の企業がこの移行に必要な資金にアクセスできるよう支援することで、経済そのものの変革を促しています。IFCでは、必要な知識や手段の習得に向けた金融機関を対象とする研修の実施、グリーンボンドまたはブルーボンドといった金融商品の市場が持続的に成長できるよう世界的な基準の設定、資本コストを削減し民間セクターが可能な限り効率的に移行できるようパートナー機関と投資リスクの共有、そして、機関投資家が資金を出し合い、収益性を確保しつつ、経済を持続可能な成長軌道へと移行できるような投資商品の開発、といった5つの分野で支援を行っています。
Q: 金融機関を直接支援する取組みにおいて、特に重視している点を教えてください。
A: 金融機関が環境配慮型の事業への融資ポートフォリオを拡大できるよう重点的に支援しています。このポートフォリオには、グリーンビルディングや再生可能エネルギー、クライメートスマート農業、さらには電気自動車やブルーエコノミーと言った新しい分野に至るまで、様々な気候関連案件が含まれます。この取組みは、世界の膨大な資金を、できるだけ速やかに持続可能な経済への移行に資する投資に振り向けるために極めて重要です。こうした投資の長期的なリターンが、他への投資をはるかに凌ぐことは言うまでもありません。
Q: 最大の機会はどこにあると考えていますか?
A: 気候変動によりサプライチェーンが混乱し事業コストが上昇しています。IFCが金融機関177社を対象に最近実施した調査では、その41%がすでに気候変動リスクをビジネスにかかるリスクのトップ3に挙げています。一方で、90%が自社の金融ポートフォリオに占めるクライメートファイナンスの割合が増加すると予測しています。IFCでは、リスクの管理と開示への支援と、都市部を中心とした低炭素型の開発への投資に大きな機会が存在すると考えています。それに伴い、グリーンボンドやブルーボンド、サステナビリティ・リンク・ボンド、その他の新興商品に至るまで、さらに多様な金融商品が必要になります。
「世界の膨大な資金をできるだけ速やかに持続可能な経済への移行に資する投資に振り向ける必要があります。」
- ウィル・ベロー、IFC気候変動ファイナンス、グローバルヘッド代理
Q: IFCはどのように変化してきましたか?
A: IFCでは金融業界での気候変動ビジネスを急速に拡大しています。昨年だけで、気候変動関連事業の強化に取り組む金融機関50社を支援するべく、同セクターでの活動の40%に相当する45億ドルを投融資しました。さらにIFCは、2023年7月1日までに新規プロジェクトの85%、そして2025年7月1日以降は100%をパリ協定の目標に沿って実施する予定です。すなわち、IFCのこの分野での活動のあらゆる側面に気候変動のリスクと機会が組み込まれていると言えます。
Q: 新たなクライメートエコノミーへ資金を供給するという金融機関の誓約の実現に向け、我々がなすべきことは何でしょうか?
これは、金融機関だけでは達成できません。緩和と適応への投資は往々にして初期費用がかかり、通貨変動やデータが不十分という問題に加え、さらに長期的な視野も求められます。また、金融機関における気候変動に関する意識啓発や新たな金融商品を開発する組織内の能力が十分とは言えません。このことから、政府が明確で一貫した規制とインセンティブを導入するとともに、IFCをはじめとする開発金融機関が投資リスクの共有や金融機関の能力開発のための研修を通じて支援する必要があります。