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光ファイバー・ケーブルが繋ぐアフリカのデジタル経済

2019年8月26日

デボン・メイリ―、IFC コミュニケーションズ

4万人に及ぶ大学生と世界最大の情報の宝庫を結びつける最も効率的な手段-それは信頼できる光ファイバー・ネットワークだ。

「インターネットへのアクセスは酸素のようなもので欠かすことはできない」とガーナ大学でインターネット接続を管理するルーカス・シガバティア情報技術最高責任者は語る。

学生のリサーチや授業、コミュニケーションのためのインターネット環境の改善を図るため、ガーナ大学はスピードと信頼性を担保する企業を探していた。そうして契約したインターネット・プロバイダーが、シースクエアド社(CSquared)が提供するオープン・アクセスの高速通信網を利用していた。シースクエアド社は、アフリカ全土で急増するブロードバンドへの需要増加に応えるべく、ファイバー・ケーブルを敷設するテクノロジー企業である。ガーナ大学まで約20キロメートルのケーブルが敷設されたことで、高速かつ信頼性の高いインターネット接続が実現するとともに、大学が支払う接続費も30%削減された。
 

世界に追いつく

デジタル格差の是正に取り組む国への支援において、民間投資家が果たす役割は大きい。現在、インターネットの普及が最も遅れている25カ国のうち21カ国をアフリカ諸国が占めていることを踏まえれば、とりわけアフリカでのその役割は重要となる。アフリカは、インターネット利用者の割合が世界最速のスピードで増加しており、急速な勢いで世界に追いつこうとしている。しかし、世界的に見ればインターネットへのアクセスは最低水準だ。人口の25%がインターネットに接続しているが、その大半が携帯電話を通したものであり、ブロードバンドを利用することはできない。

手頃な価格でインターネットが利用できるようになることは、アフリカのデジタル経済への参画を実現するための前提条件だ。インターネット接続の改善は、個人や企業の市場へのアクセスを促進し、GDP成長率を押し上げる。デジタル化は保健医療や教育といったサービスへのアクセスを拡げる手段も提供する。さらに、デジタル技術に精通した労働者による力強いデジタル経済と競争力のある市場の構築も可能となる。

イメージ:ガーナの首都で同国最大の都市、アクラの街並み

人口の4分の3がインターネットへのアクセスがないアフリカでは、光ファイバーケーブルがインターネット接続に革命をもたらす可能性がある。しかし光ファイバーケーブルは高価で、1キロメートルあたりの敷設コストは1万5,000~3万ドルにものぼる。アフリカ全土でケーブルを整備するにはさらに50万キロメートルの敷設が必要だ。

これほどの規模のプロジェクトを政府単独で実施することは不可能だ。そこで、シースクエアド社のような民間投資家の力が必要となる。シースクエアド社は、域内でどのキャリアでもアクセスできるオープンな光ファイバー通信網を構築するホールセール型の事業を展開し、エンドユーザーと移動体通信事業者やインターネット・サービス事業者とを結び付けるという費用対効果の高いソリューションを提供している。

2013年の設立以来、同社は、ガーナ、リベリア及びウガンダの7つの都市圏でファイバー・ケーブル3,000キロメールを敷設、これまでに40を超えるインターネット・サービス事業者と移動体通信事業者がこれを利用してきた。2017年、IFCとグーグル、コンバージェンス・パートナーズ、そして三井物産株式会社が、最大1億ドルの同社への投資を発表し、リベリアのシースクエアド・ネットワークは、リベリア政府と米国国際開発庁(USAID)とのパートナーシップのもと構築された。

アフリカのデジタル経済への参画

インターネット接続の改善に伴う利益は経済全体に行きわたる。ガーナ大学でコンピュータ・プログラマーになるために勉強をする19歳のオウス・マイケルは、キャンパスのどこでもスピーディで信頼性の高いインターネットにアクセスできることはとても重要だと語る。

「インターネットは自分の能力を引き出す助けになる」とガーナ大学の90席あるコンピュータ・ラボの一席でコーディング・ビデオを見ながらマイケルは語る。「まさに学習する自由だ。」

インターネット環境の改善は、中小企業の成長も促す。ガーナのファッションブランドであるナレム・クロージング(Nallem Clothing)のグレゴリー・ケンコーCEO兼デザイナーは、同社はシースクエアド社の高速回線への接続により、グローバルに事業を展開し新たなバイヤーとつながることができたと語る。

ナレムは、ガーナの首都アクラに11店舗の店を展開する、従業員数は300人の企業である。現地生産した商品をアフリカの他の地域やオーストラリア、ヨーロッパそして米国に輸出している。シースクエアド社の高速通信網を使い、ケンコーCEOは輸出した商品を追跡し、ナレムのウェブサイトで自身がデザインした商品を紹介する。

ケンコーCEO兼デザイナーは「ナレムが世界的なブランドに成長するためには、スピーディなインターネットがカギだ。これによってチームが一体となって業務に取り組める」と語る。

「長期的な資本」とパートナーシップ

シースクエアド社のパートナーは、同社に情報・コミュニケーション技術分野における豊富な経験をもたらすなど、その成功に欠かせない存在となっている。「アフリカ大陸でファイバーやブロードバンド・インフラを整備するには、長期的な資本が不可欠だ。IFC、グーグル、コンバージェンス・パートナーズ、三井物産株式会社の投資がなかったら、事業者が求めるスピードと高い質のサービス提供は不可能だった」とシースクエアド社のランレ・コラデCEO(最高経営責任者)と語る。

シースクエアド社は、ファイバー・インフラをアフリカ中西部のさらに多くの国に拡大する計画を進めている。「『アフリカ全土をつなげる』これが我々のビジョンだ。アフリカの『ファイバー化』を進めていく」とコラデCEOは語る。

 

 

サブサハラ・アフリカの人々や企業に、インターネットを使ったビジネス機会を提供するシースクエアド社の取組みは、横浜で8月28~30日に開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD7)で紹介された。

資本力と高い専門知識を有する日本企業は、アフリカの開発を進める上で重要な役割を担ってきた。IFCは、日本の官民両セクターのパートナーと連携し、投資機会の創出に取り組んでいる。シースクエアド社の成長は、IFCと日本の三井物産株式会社とのパートナーシップが、アフリカにおけるテクノロジー・インフラの格差解消に貢献した一例である。

 

 

 

 

2019年9月発行